「仕事を頻繁に休まなければいけない」仕事と不妊治療の両立の難しさ

肉体的・精神的負荷が大きいと言われている不妊治療。治療自体が過酷なのはもちろんのこと、仕事と不妊治療の両立の難しさが大きな壁になってきています。

2018年度に厚労省が初めて行った実態調査で、不妊治療の経験がある人のうち、仕事との両立ができずに離職した人が16%に上ることがわかりました。

2017年に実施された、NPO法人Fineの調査「不妊治療と仕事に関するアンケートPart 2」でも、仕事をしながら不妊治療を経験したことがある当事者5,526人のうち、95.6%が「仕事との両立が困難」と回答したという結果が出ています。

この記事では、不妊治療と仕事の両立が難しい理由について、当事者のリアルな声を織り交ぜつつ、具体的にご紹介していきます。

 

 「仕事を頻繁に休まなければいけない」が両立を妨げる大きな理由に

先にご紹介したNPO法人Fineの調査によると、「仕事をしながらの不妊治療は、どんなところが難しい?」という質問に対し、最も大きな割合を占めた理由は「急に・頻繁に仕事を休まなければいけない」という回答(71.9%)で、次いで「あらかじめ通院スケジュールを立てることが難しい」(47.3%)という回答が多くありました。(※複数回答可)

どうして急に、あるいは頻繁に仕事を休まなければいけなくなるのでしょうか。以下では、不妊当事者の方の体験談をいくつかご紹介していきます。

 

  排卵周期によって左右される通院日

不妊治療は、生理や排卵日(またその周期)によって通院日が決まります。
通院した日にクリニックから「次はこの日に来てください」「また明日、診てみましょう」と言われることも少なくなく、先の見通しが立てづらいことが大きな特徴です。

治療を経験された方のリアルな声として、このようなものがありました。

「あらかじめ予定を立てるのが難しい中、何度も通院するのは大変だと肌身で感じていました。少しでも負担を減らせるように家の近くにあるクリニックに変えたのですが、予約が取りにくいうえに先生もお疲れ気味で、通うたびに申し訳ないような気になってしまっていました」(35歳/NPO法人代表)

「一回の通院にかかる負担がとても大きいです。病院によってはすごく混んでいて2−3時間くらい待つのは当たり前だったりもします。通院の予定が直前までわからないので、通院日が決まった瞬間に職場に連絡して打ち合わせの予定変更をし、出勤時間の変更を伝えていました。周りに迷惑をかけ、自分自身も十分なパフォーマンスができていないという気持ちから、責任のある仕事を任されることに引け目を感じるようになっていきました」(36歳 / フリーランス)

不妊治療は体のリズム(周期)に合わせなければならず、場合によっては排卵を促す薬などを飲みながら卵胞の大きさをエコーで確認して排卵日を特定していきます。
何度も通院するため、急に仕事を休む必要が出てきてしまいます。

Fineのアンケートでも、「通院自体が負担であること(回数が多い、時間がかかるなど)」を両立困難な理由に挙げている方が40.8%と、多くいらっしゃいました。

 

  情報が少なく、中長期的な見通しが立てられない

短期的な予定が立てられないとなると、同じように中長期的な見通しも立てられません。タイミング法を3~4年続けたという35歳の不妊治療経験者の方は、次のように語ります。

「この先どうなるのかを分かりやすく教えてくれるものがないんです。細かいプロセスやスケジュール感、1回あたりの費用など、知りたい情報がギュッとまとまった冊子などがあれば、スケジュールももう少し立てやすかったと思うのですが」(35歳/NPO法人代表)

病院によって細かいプロセスや1回あたりの費用が異なり、計画を立てるのに必要な情報が得にくいということも中長期的な見通しが立てられない理由の1つです。

妊活ブログを参考にしたり、ネット上の不妊治療仲間で情報を交換したりしている方は多いと思いますが、情報がまとまったサイトや冊子がなく、情報収集に時間を割かなければいけないことも仕事と治療の両立を難しくする原因の1つかもしれません。

 

  おわりに

NPO法人Fineの調査「不妊治療と仕事に関するアンケートPart 2」で、両立が困難な理由の上位に入ったものは、「周りの迷惑をかけて苦しい」(25.6%)、「上司・同僚の理解を得られない/得難い」(13.0%)、「治療のことを職場でカミングアウトすることが難しい」(12.7%)で、職場や周囲の方への心苦しさを感じている方が多い結果となりました。

改善策として、仕事のスケジュールを同僚に共有して協力を得たという方もいらっしゃいましたが、すべての会社で同じような協力を得ることは難しいかもしれません。

また、第二子の妊娠するための不妊治療の場合は、仕事とプライベートの両立のほか、第一子の養育もする必要があります。この場合は特に働き方を変える、あるいは退職を余儀なくされるケースもより増えてくるでしょう。

厚労省の調査によると、勤務先に求める支援に「不妊治療休暇」「時間単位の有給休暇」などが挙がったものの、実際に不妊治療を受けている社員に休暇を与えるなど、支援や取り組みをしている企業は全体の9%に過ぎないようです。

効率の良い情報収集や、先行きが不透明な中でも「自分なりの見通し」をつけるなど、不妊治療中の当事者が行うことはもちろん大切ですが、本人のがんばりや意思だけではままならないことが多いのも、不妊治療の現実です。

不妊治療により仕事を辞めることは、治療を受けている当事者の方のみならず、会社にとっても損失が大きいのではないかと思います。急なスケジュール変更など、乗り越えなければならない壁はありますが、フラットなコミュニケーションのもと、具体的な支援策を当事者の社員と一緒に考えながら、無理なく働き続ける環境を提供することが双方にとって有益なのではないでしょうか。

(文・佐々木 ののか)


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